第73章 何かおかしい

「今野爺さんがいちばん嫌うのは、今野家でこんなスキャンダルが出ることだよ。雪乃、雪乃……あんた、自分から弱みを残しちまったね。爺さんに嫌われるのを覚悟しな」

配下は言外の意味を察し、命を受けると静かに引き下がった。

雪乃は、今野浅子が裏で何か仕掛けるつもりだとは知らないまま、自分のオフィスへ戻った。複雑に絡む胸の内を抱え、そっとドアを閉める。

今野優空を叩いた手のひらが、まだじん、と痺れている気がした。雪乃は掌をぼんやり見つめ、長いこと顔を上げなかった。

もともと雪乃は感情を爆発させるタイプじゃない。こと今野優空や今野家の人間を相手にするときは、なおさらだ。いつも、冷たい目で彼らが喚...

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