第85章 気にしない

二人にまるで存在しないものとして扱われ、もともと沈んでいた今野優空の表情はそれだけで十分に恐ろしかった。そこへ雪乃が松村理玖を「先輩」と呼んだ瞬間、さらに顔が歪む。怒りで、だ。

体の横に垂らした手が、ゆっくりと握り締められていく。今野優空は、今すぐにでも二人の間へ割って入り、引きはがしてしまいたかった。

松村理玖は身を翻し、会議室の外へ向かった。今野優空の横を通り過ぎる刹那、視線が空中で短くぶつかり合う。敵意の火花が、ぱちぱちと散った。

今野優空の顔は硬い。松村理玖も、雪乃に向けていた温和さは跡形もなく消えている。互いに見つめ合いながら、どちらも口を開かなかった。

松村理玖は会議室を...

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