第89章 彼女に会う

中島晴美はわざと雪乃の名を持ち出し、刃を隠したまま今野優空の胸に針を刺していった。

言葉を重ねながらも、彼女はちらり、またちらりと優空の表情をうかがう。けれど、優空の顔はぴくりとも動かない。

その瞬間、胸の奥にどろりとした『屈辱』が湧き上がった。

ここまで言ってやったのに――どうして反応しない?

前なら、こういう話を出せば優空は必ず声を荒らげた。苛立って、跳ねるように。

晴美は唇を噛み、声をふっと落とす。鼻にかかった湿った声。

潤んだ瞳で見上げれば、まつげの先に涙が溜まり、いかにも庇護欲をそそる顔になる。

「優空、もう帰って……。私、ほんとにだいぶ良くなったから。お願い、雪乃さ...

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