第9章 死にかけるのが、あんただったらよかったのに

雪乃は冷たく笑った。喉の奥に、苦いものがこびりつく。

――寛大になれ、だって?

まだ何も言い返していないのに、加藤莉々が手にしていた茶碗をばん、と卓上に叩きつけた。

「善良? 寛大?」

椅子を乱暴に押しやって立ち上がる。その気配だけで場の空気が一瞬、凍った。

莉々は今野優空をにらみつけ、怒りすぎて逆に笑ってしまったように言う。

「今野優空、恥ってもん知らないの?」

今野晴美が眉をひそめ、むっとして前に出た。

「誰よ、あんた。言い方が――」

言い終える前に、加藤莉々が卓をひっくり返した。

どしゃっ。

料理の汁、皿、箸、碗。全部が宙を舞い、向かいの連中に容赦なく降り注ぐ。

...

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