第90章 来た

中島晴美は、すべてを懸けてようやくここまで辿り着いたのだ。たった数日のうちに、自分の積み上げてきたものが水の泡になるのを、黙って見ていられるはずがない。

一方その頃、雪乃は中島晴美が倒れたことも知らなければ、今野優空が車を出して病院へ向かったことも知らなかった。

――知ったところで、きっと大して気にしない。

雪乃は広いデスクの向こう側に座り、目の前のプロジェクト企画書に視線を落としていた。行を追うたびに丁寧に突き合わせ、ペンを指先に挟んだまま、違和感のある箇所には迷いなく書き込みを入れていく。

仕事に没頭する横顔には、今野優空がどこへ行ったかなど、最初から入り込む余地がない。

企画...

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