第92章 出会う

「今野社長、いちど会社にお戻りいただいて書類にサインを……すぐ終わりますので」

今野優空は仕方なく車を会社へ回した。書類に目を通して署名を済ませ、エレベーターで下へ降りる。ちょうどそのタイミングで、雪乃と鉢合わせた。

ビルの前。視線がぶつかる。

今野優空の少し硬い輪郭が、目に見えてふっと和らいだ。

「今、退社か? もうだいぶ遅いだろ」

雪乃は、午後ずっと顔を合わせていなかった相手と、こんなふうに退社の時間に遭遇するなんて思ってもみなかったのだろう。きょとんとしたのは一瞬で、すぐに表情を整える。

「うん、今帰るところ。あなたもね」

朝、自分が言い過ぎたことを思い出し、気まずさが胸...

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