第165章マスクオフ

ジェイド視点

イーサンの腕に込められる力が強まった。高価なコロンの香りが、鉄臭い血の匂いと混じり合う。私の頬に彼の心臓が激しく打ちつけられ、その鼓動は不規則で、何かにすがるかのようだった。

「ジェイド」と、彼が掠れた声で囁いた。

彼の唇が私の名前を紡ぐ音に、まつ毛が微かに震える。けれど、私は無表情を貫いた。腕の裂傷が容赦なく疼くが、痛みなど旧知の仲だ。感情から切り離す術は、もう何年も前に習得している。

「わがままな願いだとわかっている」イーサンは声を落ち着かせながら続けた。「もう一つだけ、誕生日プレゼントをもらってもいいか?」

私は黙って、彼の言葉を待った。

「この先何があっても、どんな状況...

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