第185話まだ行くよ

信号が赤に変わり、俺は車をゆっくりと停止させた。交差点の向こう側、ある人影が目に留まった。黒いタクティカルジャケットを着た若い男だ。その歩き方、寸分の無駄もない動きが、俺の記憶の何かを刺激したが、それが何なのかはっきりとは思い出せなかった。

男は痩せていて、やつれているとさえ言えるほどだった。街灯の光を反射するのではなく、吸収してしまうかのような青白い肌をしていた。彼がわずかに振り向いたとき、その横顔がちらりと見えた。突き出た頬骨、窪んだ目、そして冷たく孤立した凄みを放つ顔。

あの顔を知っている。

信号が青に変わったが、俺は動かなかった。後ろの車が焦れたようにクラクションを鳴らす。俺は急...

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