第189話冗談だよ

ジェイド視点

ディナーの皿が片付けられ、ローレンスの豪奢なダイニングルームには、サフランとハーブでローストした子羊の残り香だけが漂っていた。私はクリスタルのウォーターグラスの縁を指でなぞる。この果てしない暗闇の中で自分を保つため、その冷たく滑らかな感触に意識を集中させた。

「残念ながら、少々がっかりされるような知らせがありまして」テーブルの向こうからローレンスの声がした。「ご依頼の品ですが、調達が驚くほど難航しておりまして。スペインで特殊な化合物を二種類と注射液を見つけるのがやっとでした。お待ちいただくことは可能でしょうか? 海外から追加の物資を輸送させることもできますが」

「その手間は...

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