第193話見慣れた顔

ラップトップで暗号化されたデータの分析をしている最中、ぽすん、という軽い音に注意を引かれた。視線を下にやると、足元にテニスボールがあり、その前にはドーベルマン――以前はザックという名だった――が、床に尻尾を勢いよく打ち付けながら、期待に満ちた顔で座っている。

「今はだめよ、キャプテン」私は足でボールをそっと押しのけながら言った。「仕事中なの」

犬は首をかしげ、その茶色い瞳が揺るぎない決意を宿して私を見つめてくる。そして鼻先でボールをこちらへ押し戻した。

「キャプテン?」キッチンの戸口からイーサンの声がした。彼はコーヒーマグを片手にドアフレームに寄りかかり、面白そうに眉を上げている。「犬の...

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