第203章パブリック・エネミー

目の前に、古いアパートがそびえ立っていた。崩れかけたファサードが、長年の放置を物語っている。自動車修理工場のマイクによれば、ここにシボレーの持ち主が住んでいるという――修理代の支払いを拒否し、サイラスを轢き殺すと脅した、あの男だ。

建物に入ろうとしたその時、ジェイドは通りの角から近づいてくる人影に気づいた。暮れなずむ夕闇の中でも、それが修理工場にいた男だとわかった。中肉中背、後退し始めた生え際、そして間違いなく安酒のボトルが入っているであろう茶色い紙袋を握りしめている。

男もほとんど同時に二人に気づき、見覚えのある顔に目を見開いた。ジェイドの姿を認めた瞬間、彼の顔から血の気が引き、ヘッドラ...

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