第31話弟に触らないで

ジェイド視点

最後のチャイムが鳴った。しかし、いつもなら出口へと殺到するはずの生徒たちが、運動場の方へと流れていく。何かドラマが起きるのを察知した人々特有の、決然とした足取りで。興奮した声がざわめきとなり、電気のように廊下を駆け巡った。

「喧嘩だ! 運動場で喧嘩が起きてるぞ!」

ちょうどロッカーの整理を終えたところで、その騒ぎに気づいた。普段なら、十代のいざこざなんてどうでもいい。でも、なぜか胸の奥が嫌な感じでざわついた。私は人波の熱狂に巻き込まれないよう、観察できるだけの距離を保ちながら、彼らの後を追った。

運動場の端に着く頃には、生徒たちが分厚い輪を作っていた。何が起きているのかを...

ログインして続きを読む