第25章 彼女は愛され者

向こうは一瞬、言葉を失った。だが次の瞬間には、焦ったような声で必死に言い募ってくる。

「婚約解消だと? そんなもの、冗談で済む話じゃない。芹沢家の家柄のどこに不満がある? あちらにしてみれば申し分ない縁談だぞ。当時この婚約は、もともと両家の年長者同士が決めたものだ。そうだ、あの頃はいろいろ事情が特殊でな……そこも時間を取って確認しないと――」

結城明臣は最後まで聞かず、きっぱりと遮った。

「だから、絶対に婚約は解消するって言ってるだろ。たとえ世界中の女が一人残らず消えたって、俺があいつを娶ることはない。もう好きな人がいる」

電話の向こうで、中年の男が机をばん、と叩く気配がした。

「...

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