第28章 ありきたりだと思う

水上伊鶴が結城明臣のオフィスへ足を踏み入れると、デスクの上に置かれたケーキと花束が真っ先に目に入った。

結城明臣は珍しく頬をわずかに赤らめている。

「少し食べるか?」

「いえ、結構です」

水上伊鶴は内心で感心した。さすがは情報網を築き上げた男だ。ただ会うだけで、ここまで気を回すなんて。

そのとき、結城明臣のスマホがぶるりと震えた。

視線の端に映ったメッセージは、アシスタントからのものだった。

『社長、俺たちが恋の後押ししてあげます』

結城明臣は即座にスマホを伏せる。胸の奥で舌打ちした。どうやらあの連中、暇を持て余しすぎているらしい。

二人がこうして改まって向かい合って座るの...

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