第38章 賭けをしよう

あまりにもまっすぐな気遣いの言葉に、水上伊鶴はその場で固まった。

瞳の色がわずかに揺れる。しばらくしてから顔を上げ、淡々と返す。

「……何?」

その一言の奥に、結城明臣は「逃げ」を聞き取った。

まるで――自分に好意があると確信した瞬間、水上伊鶴は迷いなく背を向けて去ってしまう。そんな気配。

結城明臣の表情が何度か揺れ、やがて初対面のときの軽口に落ち着いた。

「君が死んだあと、俺の面倒見る奴がいなくなるのが困るだけだ」

水上伊鶴はほっと息をつき、口調も少し緩む。

「……あなた、結局名前は?」

「結城だ。結城グループの――」

本当のことを言おうとして、言葉が続きかけた。

だ...

ログインして続きを読む