第1章

この赤いシルクのイブニングドレスが、肌にぴったりと張り付いている。その感触が、今夜の狂った決断を思い出させる。

五十人。この街で最も影響力のある人物が、きっかり五十人、大地のパーティーに出席している。

深呼吸を一つして、ヒールを履いたままリビングへと足を踏み入れた。クリスタルのシャンデリアが暖かい光を投げかけ、客たちのグラスの中ではシャンパンの泡が踊っている。

リビングの中央には、深い青色のオーダーメイドスーツに身を包んだ大地が、数人のビジネス仲間と談笑しながら立っていた。これだけの人混みの中でも、彼は最も人目を引く存在だ。四十二歳にして、今なおアスリートのような体格を保ち、その深い青色の瞳は常に鋭い光を宿している。

私の保護者。私の……すべて……

八年間。十歳の時から、彼は私の世界の中心だった。両親が交通事故で亡くなった時、彼が私を引き取り、家を与えてくれた。でも今、彼が朱音との婚約を発表しようとしているのを見て、私はもう感謝だけを抱く幼い少女のふりを続けることはできないと悟った。

「美月!」背後から莉子の声がした。「本当に来たんだ。怖気づいて来ないかと思った」

振り返ると、今夜は髪を鮮やかな紫色に染め、黒いカクテルドレスを着た親友がいた。「来なくちゃいけなかったの」

「そのドレス……マジで、もう目がハートになっちゃうわよ」彼女は片眉を上げる。「大地があなたを見たら、もう目がハートになっちゃうわよ」

「まさにそれが狙いよ」。私は笑みを浮かべている大地の方に視線を送った。

莉子が私の腕を掴む。「本気でやるつもり? みんなの前で?」

「ええ」

私は莉子から離れ、大地の方へと歩き出した。一歩一歩が断崖の縁へと向かっているような感覚だったが、もう止まることはできなかった。

「大地」。私は彼に呼びかけた。

彼が振り返り、私を見て、一瞬動きを止めた。

「美月、今夜は……綺麗だ」

彼の隣にいた数人のビジネスマンも、こちらに顔を向けた。

「言いたいことがあるの」。私は真剣な眼差しで彼を見つめた。

リビングの会話が静まり始める。人々がこちらで起きていることに気づき始めたのだ。すべての視線が私に集中しているのを感じるが、不思議なことに、そのおかげでかえって勇気が湧いてきた。

「美月……」大地の声には警告の色が滲んでいた。

「愛してる」

その言葉は、静まり返ったリビングで爆弾のように炸裂した。

部屋全体が、瞬時に静寂に包まれる。シャンパングラスは宙で止まり、すべての会話がぴたりと途絶えた。自分の心臓の鼓動だけが、耳の中でドラムのように鳴り響いているのが聞こえる。

大地の表情が変わった。「美月、何を言っているんだ?」

「愛してるって言ったの。クレイジーなのはわかってる。でも、愛してるの」。私の声は震えていたが、無理やり言葉を続けた。「私はもう子供じゃないの、十八歳よ。自分が何を言っているかわかってる」

見守る群衆の中から囁き声が波のように広がる。「なんてことだ」「馬鹿げている」といった声が聞こえてくる。でも私は大地だけを見つめていた。彼の瞳に浮かぶ衝撃と……あれは、恐怖?

「あなたに朱音と結婚してほしくない」。勇気が消えかけていくのを感じながらも、私は止まれなかった。

「もういい!」大地の声が突然厳しくなり、私の腕を掴んだ。「美月、お前はまだ子供だ。馬鹿なことを言うのはやめろ。客が見ている」

彼の言葉は、氷水のように私に浴びせられた。私は彼の瞳を覗き込み、ほんのわずかでも温かさや理解の兆しを探したが、そこにあったのは冷たさと当惑だけだった。

「現実? 現実っていうのは、私があなたを愛していて、あなたはあなたを全く愛していない女と結婚しようとしているってことよ」。私は彼の手を振り払った。

その時、リビングの向こう側から、カツ、カツ、とハイヒールの音が床に響いた。朱音がこちらへ歩いてくる。彼女の赤い髪は完璧に結い上げられ、ベージュのデザイナースーツを身にまとっている。その顔は無表情だったが、瞳に宿る氷のような冷たさを感じ取ることができた。

「どうしたの?」と彼女は尋ねたが、その表情からして、たった今起きたことすべてを聞いていたのは明らかだった。

大地はすぐに彼女の隣へ行き、その腰に腕を回した。「何でもないよ、美月が……少し感情的になっているだけだ」

朱音は私をちらりと見てから、大地に微笑みかけた。「あら、それなら、ちょうどいいタイミングかしら?」

大地は頷き、客たちの方を向いた。彼が一つ咳払いをすると、リビングは再び静まり返った。

「親愛なる友人の皆さん」と彼は切り出した。その声は自信と魅力を取り戻している。「今夜は皆さまにお集まりいただき、ありがとうございます。喜んでご報告します。朱音が、私のプロポーズを受け入れてくれました」

リビングは拍手と祝福の言葉で沸き立った。朱音が手を挙げ、薬指にはめられた巨大なダイヤモンドの指輪を見せつける。それはクリスタルのシャンデリアの光を浴びて、忌々しい星のようにきらめいていた。

「皆さまの祝福に感謝します」。朱音の声は甘く、そしてプロフェッショナルだった。「来年の春に結婚式を挙げる予定です」

さらに大きな拍手。さらに多くの祝福。私はまるで悪夢の中に閉じ込められたかのように、そこに立ち尽くしていた。

友人たちから祝福を受ける大地を見つめる。彼の顔は幸せそうな笑みで輝いていた。彼は……今まで見たことがないほど、幸せそうに見えた。

もしかしたら、莉子の言う通りだったのかもしれない。もしかしたら、私はずっと夢を見ていただけなのかもしれない。

突然、もうこれ以上耐えられなくなった。部屋の空気が薄くなり、すべての音が混じり合って耳鳴りのように響く。ここから出なければ。今すぐに。

私はくるりと向きを変えてドアへと駆け出した。背後で莉子が私の名前を呼ぶのが聞こえたが、止まらなかった。廊下を走り抜け、玄関のドアを押し開け、ひんやりとした夜の空気の中へ飛び出した。

雨が降り始め、細かい滴が肌を打つ。私はヒールを蹴り飛ばし、濡れた歩道を裸足で走った。シルクのドレスが脚にまとわりつく。

ダウンタウンにあるバーが見えるまで、私は走り続けた。普段の私なら絶対に行かないような場所。でも今夜は、「普段通り」のどこにも行きたくなかった。

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