第42章 美味しい魚

農家の飼っている黒魚は脂が乗っており、鱗だけでも光を放っていた。

青山希は手際よく両面の身を叩いて柔らかくし、それから丁寧に鱗を剥がしていく。

一匹の魚に細かく飾り包丁が入れられていく。一切れ一切れが均等な厚さでありながら、骨と身は繋がったままだ。用意しておいた下味用のタレが、その一切れ一切れの魚肉に均一に塗り込まれていく。

まだ鍋で焼いてもいないのに、三人ともこの魚が間違いなくよく味が染み込んでいるだろうと感じていた。

お婆さんの大根漬けの腕前もなかなかのものだった。持ってきてくれた農家の酢漬け大根はちょうどいい塩加減で、きれいに焼き魚の上に並べられ、一緒に鍋へと投入された。

その...

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