第58章

「風太郎、行かないでよ!」

弓場風太郎が立ち去ろうとするのを見て、江宮源人は慌てて彼の腕を掴んだ。

そして振り返り鈴木明美に向かって言った。「明美、風太郎を連れてバーに行きたくないなら、一人で行けばいいよ!」

鈴木明美はその言葉を聞いて、その場に凍りついた。表情には信じられないという色が浮かんでいた。

「江宮源人、今なんて言ったの?」

鈴木明美は怒りを含んだ表情で江宮源人に尋ねた。

「だから、風太郎をバーに連れて行きたくないなら、一人で行けばいいって言ったんだよ。どうせ今日は風太郎が奢ってくれるんだし、風太郎が行かないなら、俺も行かない!」江宮源人は歯を食いしばりながら小声で繰り...

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