第65章

夜九時。

弓場風太郎はアパートの部屋に戻ってきた。藤原雨子の件のせいか、あるいは今日小林真子に言われた言葉のせいか、彼の気分はあまり晴れなかった。

ぼんやりとしたままリビングに入り、自室へ戻ろうとしたその時、ふとミナの部屋のドアが開いていることに気づいた。

ミナはベッドに腰掛け、なかなかのイケメンと楽しそうに談笑している。

ミナの部屋に見知らぬ男がいるのを目にした瞬間、弓場風太郎は完全に呆然となった。

彼は思わず固まった。ミナが今日、アカウントを乗っ取った男とデートに行くはずだったことを、彼ははっきりと知っていたからだ。

そして今、ミナの部屋に見知らぬ男がいるということは、この男...

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