第19章
刃先が皮膚と肉に沈んでも、杉山夕晴の手は一分の揺れもなかった。
橘陸斗は顎のラインをぎり、と引き絞り、氷青の瞳の奥で殺意が渦を巻く。
アルファの威圧が、ほとんど実体を持つかのように、じわりじわりと夕晴の背骨を押し潰していった。
「……いい」
橘陸斗は歯を食いしばり、喉の奥から言葉を絞り出す。
「血をやる」
そのときだ。
江崎渚が星ちゃんを抱きかかえて駆け込んできた。背後には、顔色を沈めた杉山陽向。
「星ちゃん……」
乾ききったはずの目の奥が、また熱くなる。
「夕晴」
渚は不安げに彼女を見つめた。追い詰められ、これしか道がないと分かっているからこそ、止められない。
「マ...
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