第26章

杉山夕晴の頭は、真っ白になった。

彼女はただ、その車を見ていた。

そして――あの人を。

「夕晴?」

江崎渚は、彼女が抑えきれないほど震えているのに気づいた。

「どうした?」

眉をひそめ、夕晴の視線の先を追う。

だが、窓の外の通りには足早に行き交う人々がいるだけで、他には何もない。

「彼が……」

杉山夕晴の顔色は紙のように白かった。

「彼がここにいる……橘陸斗……」

江崎渚の目つきが鋭くなる。だが声は落ち着いていた。

「見間違いだ」

「同僚から聞いてる。橘陸斗は今日は病院で杉山雨音の再検査に付き添ってる。ここにいるはずがない」

杉山夕晴は呆然としたまま、もう一度あの...

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