第30章

「ここから本館ホールまで、きっちり500メートルだ」

橘瑛介は、砕石と積雪に埋もれた通路を指さした。

「アルファがおっしゃった。杉山さんがそんなに江崎渚の家へ通うのが好きなら、いっそその脚、要らねえだろってな」

「中へ入るのは許可する。ただし……膝で入れ」

「……分かった」

迷いは、欠片ほどもなかった。

杉山夕晴は星ちゃんを胸元に慎重に固定し、両手を冷えきった地面に突く。膝を折り――

ゴン、と。

膝が砕石へ叩きつけられ、小石が膝頭に食い込んだ。

夕晴は歯を食いしばり、痛みに声を漏らさない。

痺れて動かない脚を引きずり、ほんのわずかずつ、前へ。

1メートル。

2メートル...

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