32、

杉山夕晴の瞳孔が、ぎゅっと縮んだ。

狂狼の爪は短剣じみた長さで、冷たい光をぎらつかせている。

身体が、勝手に震えだした。

狼魂の庇護を失ったこの身は、変異した巨大狼の圧に晒されるだけで、あまりにも脆い。幽影の力がない今、立ち上がるだけの気力すら残っていなかった。

腕の中で半ば意識を失っていた子が、その咆哮に叩き起こされる。

「ひっ……! おお、狼! 狼がいる!」

星ちゃんが甲高い悲鳴とともに泣き叫び、小さな手で杉山夕晴の衣の襟元をぎゅうっと掴んだ。恐怖で全身がびくびくと痙攣している。

一か月あまり前。地下牢で味わった苦痛が、星ちゃんの心に消えない傷として刻まれていた。

「星ち...

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