35、

「橘陸斗、正気なの……?」

杉山夕晴はベッドに手をついて、じりじりと後ずさった。目にはあからさまな警戒が浮かんでいる。

「星ちゃんをどこへやったの?」

「星ちゃん?」

橘陸斗は冷たく嗤い、振り向きざまに部屋のドアを施錠した。

節くれ立った指がネクタイの結び目を乱暴に掴む。

ぐい、と引き抜かれた深灰色のシルクタイは、そのまま無造作に手のひらへ巻きつけられた。

「こっちが聞きてえよ。あの雑種、江崎渚との間にできたガキなんじゃねえのか?」

橘陸斗の言葉は、一語ごとに杉山夕晴の胸を抉った。

「雑種なんかじゃない! あの子は――」

言い終えるより早く、長身の影がのしかかるように覆い...

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