47、

いつの間にか車窓の外には凍雨が降りはじめていた。細い雨脚に砕けた雪が混じり、ガラスを叩くたび、世界の輪郭が滲んでいく。

杉山夕晴は後部座席に身を預けたまま、虚ろな視線で窓の外を見ていた。

「お客さん、ここまでだ。ここから先は私有地でね。タクシーは入れないんだ」

運転手の声に、杉山夕晴は黙って料金を払い、ドアを押し開けて降りた。

冷たい雨が一瞬で髪を濡らし、襟元から風がするりと入り込む。思わず身を震わせ、肩をすくめた。

コートを掻き合わせ、足を踏み出す。

――だが、十歩も進まないうちに。

背後の静まり返った山道を、突然エンジン音が裂いた。

杉山夕晴の足が、ぴたりと止まる。

空...

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