57、

杉山夕晴はもがくようにして床から起き上がった。動きが焦りすぎたせいで膝が笑い、どん、と重たく地面へ膝をつく。

痛みなど構っていられない。這うように、転がるように鉄扉へ突進し、両手で冷え切った鉄格子をがっちり掴む。希望に濡れた目を見開き、外の気配を必死に追った。

「星ちゃん……ママだよ。ママ、ここにいる……」

ガチャン、と鈍い金属音。太い鍵が揺れ、重たい鉄扉がきい、とゆっくり押し開かれる。

廊下の黄ばんだ壁灯の薄明かりに、杉山夕晴は扉口の人影をはっきり捉えた。

星ちゃんじゃない。

逆光に沈んで不気味に見える杉山雨音の顔。そしてその背後、注射器を持った狼医。

その瞬間、胸いっぱいに...

ログインして続きを読む