第52章

車はそのまま病院へ向かった。外には取材に来たメディアが何社かいたものの、今回は事が事だけに皆どこか遠慮がちで、騒ぎ立てる者はいない。佐藤美咲は別に公の人物でもないため、館内への導線も滞りなく、一直線に3階306号室まで通された。

病室の前には人がずらりと並んでいた。全員、背筋が伸びていて、いかにも――という雰囲気だ。その中にひとり、無精ひげを生やした男だけが少しだらしなく、廊下で半分しゃがみ込んでいる。

顔を上げ、渡辺光輝を見て、次に佐藤美咲を見て、ためらいがちに訊いた。

「これ、阿部蓮の……どっちの妹?」

「下のほうです」渡辺光輝が答える。

「へえ?」

男は急に興味を持ったよう...

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