第70章

四十人でひとつの役を奪い合う。――それだけで、この役がどれだけ「欲しい」と思われているかがわかる。

佐藤美咲は、ついさっきトレンドに乗ったばかりだ。ホールにいる連中は彼女を見つけると、反射的に視線を二度、三度と重ねてくる。すぐに、親しい相手とこそこそ耳打ち。話題が何かなんて、考えるまでもない。

当の美咲は顔色ひとつ変えず、伊藤彩のこともまともに見ない。どうせ向こうも、こちらを見ているくせに「ざまあみろ」とでも言いたげな顔をしている。

一方、鈴木明里はわかりやすいほど緊張していた。手元の書類に目を落としたまま、何かを必死に書き留めている。

そこへ佐々木富美子が近づいてきて、美咲に声をか...

ログインして続きを読む