第71章

高橋詩織は顔を強張らせ、反発しようとした。だが佐藤美咲がぐいっと前へ引き寄せ、そのまま力任せに突き放す。高橋詩織には抵抗する余地がまるでない。助けを求めるように周りへ視線を投げるが、見ているだけの人間ばかりで、藤井修は藤井修で焦った顔をしている。

ほどなくして、監督が声を張った。

「カット!」

佐藤美咲はすぐに高橋詩織から手を離す。

高橋詩織は顔色を失い、冷えた目で佐藤美咲を一瞥した。

監督は二人の資料に目を落とし、ぱらぱらと捲ってから言う。

「高橋詩織。先に一段、やってみよう。俺が言う。君が演じろ」

呼ばれたのが自分だと分かった瞬間、高橋詩織は胸の奥でほっと息を吐いた。殴り合...

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