第76章

佐藤美咲は、さっきまで胸の奥で揺れていた迷いが、ふっと静まるのを感じた。受話器の向こうで森田亮が言う。

「でもさ、向こうの好き放題にさせるわけにもいかない。俺のところにイメージキャラクターの仕事が一件来てる。元は高橋詩織に回す予定だったやつなんだけど――奪いに行かない?」

佐藤美咲は目を瞬かせた。

「奪う、って……?」

「そう。藤井修と話が進んでるらしいけど、こっちが手を出しちゃいけないなんて決まりはないだろ」森田亮が軽く笑う。「仕事で叩き潰す。それが本当の意味での“圧”だ」

「……うん。やる」

即答だった。

森田亮は笑みを含ませたまま言う。

「藤井修にも、そろそろ痛い目を見...

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