第85章

佐藤美咲はごくりと唾を飲み込み、スマホを凶悪な目つきで睨みつけた。まるで怪獣でも相手にしているみたいに。画面へ顔を寄せ、蚊の鳴くような声で「お兄ちゃん……」とだけ漏らす。

呼んだあとは、もう何も言えなかった。向こうも沈黙したまま。

切るべきか、切らないべきか。胸の奥がそわそわして、指先が落ち着かない。

そのとき、阿部蓮の声が低く落ちてきた。

「……お前、俺を殺す気か」

「……そ、そんな……ある……?」

「寝ろ」

「うん。おやすみ、お兄ちゃん」

「おやすみ」

ぷつり、と通話が切れた。

ベッドに倒れ込んでも、頬の熱が引かない。美咲は布団をひっつかんで顔までかぶり、もぞもぞと転...

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