第88章

「おじさん!」と高橋詩織が我に返り、顔面蒼白で叫んだ。

佐藤美咲も呆然とした。阿部誠が詩織にどれだけ冷たく当たっても、ここまで怒りを露わにすることはない――ずっと、そう思っていたのに。

……堪忍袋の緒が切れたのだ。

阿部誠は振り返りもしないまま、佐藤美咲にだけ言った。

「上で休め。お前の母さんを下に降ろすな」

「……うん、わかった」

美咲は台本を放り出し、ばたばたと階段を駆け上がった。

ちょうど二階で佐藤恵子と鉢合わせる。寝起きの恵子は大きなあくびをしながら髪を結っていて、美咲はそのまま恵子に抱きついた。

「ちょ、どうしたの?」

美咲は首を横に振るだけで、離れない。

――...

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