第15章 彼の脚の傷はおかしい

桐生瞳のひと言は、凪いだ湖へ巨石が投げ込まれたみたいに、メインリビングの空気を一瞬で沈ませた……

桐生明人は顔を強張らせ、眉間に深い皺を刻む。

沢渡令子はというと、目の縁がみるみる赤くなり、堪えきれない涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

何年経とうと、息子があのとき味わった出来事に触れた瞬間、胸の奥を見えない手でぐいと握りつぶされる。痛くて、息が詰まる。

「瞳……あの子のことは、あなたを失ったのと同じで……私たちにとって一生の痛みなの。辰哉への、償いきれない負い目でもある」

沢渡令子は嗚咽を噛み殺し、目尻の涙を拭うと、ゆっくりと言葉を紡いだ。長いあいだ封をしていた過去を、少しずつ開けるよ...

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