第29章 みんな彼女に肩入れする

桐生瞳はそこでようやく気づいた。これだけ豪華に並んだ料理が、誰ひとつ手を付けられていない。

目にわずかな驚きを宿し、彼女はそっと口を開く。

「お母さん。夜は帰りが遅くなるって、先に食べてていいって言ってたのに……どうしてずっと待ってたの?」

沢渡令子は瞳の手の甲をぽんぽんと軽く叩き、眉尻を柔らかく下げて笑う。

「家族のご飯はね、やっぱり揃って食べたほうがおいしいのよ。ちょっと待っただけだもの、気にしないで」

桐生明人も隣でうんうんと頷いて同意した。

そこまで自分を気にかけてくれている。その事実に胸の奥がじんわり温まり、瞳はこれ以上は遠慮せず、素直に席へ向かった。椅子を引いて腰を下...

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