第50章 彼女が私に薬を盛らせた

桐生万理華はびくりと肩を跳ねさせ、危うくその場に崩れ落ちそうになった。

部屋の入口には、屋敷の使用人が二人立っている。いつもの慇懃さは影を潜め、顔つきは硬い。

「万理華様」

そのうちの一人が言った。

「旦那様と奥様がお呼びです。すぐ下へ」

胸の奥が、ひやりと沈む。掌には冷たい汗がにじんでいた。

万理華はどうにか笑みを作り、心もとない声を絞り出す。

「分かったわ。着替えてから――」

「今すぐ、とのご指示です」

二人の表情は変わらない。そこに交渉の余地はなかった。

万理華が言い足す前に、使用人が踏み込んできた。左右から腕を取られ、そのまま部屋の外へ引きずり出される。

「離し...

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