第60章 彼が気に入らない

桐生瞳は手にしていたバットを地面へ放り投げた。ガンッ、と鈍い衝突音が響き、ハクの身体がまたびくりと跳ねる。

当の本人は手の埃をぱっぱと払っただけで、どこまでも気だるげな口ぶりだった。

「最初からそう言えばよかったのに」

さっき叩き込んだ数発は、すべてこの車の急所に正確に入っている。外から見ればへこんだ箇所がいくつか、ライトが数個割れただけ――しかし内部の損傷は、見た目の比ではない。十倍は深刻だ。

本気で直すとなれば、数千万はくだらない。

ハクは、これで痛い目を見たわけだ。

桐生瞳が観客席へ戻ると、周囲の視線が明らかに変わっていた。

桐生零は手すりにもたれ、感心した目を向けながら...

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