第118章 彼は全てを知った

彼女がシャワーを浴びて出てくる頃には、ずいぶんと静かになっていた。どうやら本当に疲れているらしい。

 私は彼女のためにベッドを整え、その寝顔を見届けてから、ようやく自室へと戻った。

 ベッドに身を横たえたものの、何度も寝返りを打つばかりで、なかなか寝付けない。

「石川萌香」のこと、そして私と「山本宏樹」との結婚生活のこと……様々な思いが胸中を去来し、心は乱れるばかりだ。

 恋愛や結婚といったものが、女に一体何をもたらすというのだろう。私にはもう、分からなくなっていた。

 言えるのは、私と石川萌香は二人とも、愛というものに傷つけられた敗残者だということだけ。

 夜の静寂は決まって不...

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