第19章 子猫

長谷部翔太にもらった薬に睡眠作用でもあったのか、私はすぐに深い眠りに落ちた。夢も見ないまま一夜が明け、目が覚めた時にはすでに空が白み始めていた。

起き上がって洗面所へ向かうと、介護士は歯磨き粉まで絞って用意してくれていた。

介護士のあまりの仕事ぶりに心中で感心していると、森本友紀が朝食を手にドアを開けて入ってきた。

「木村姉さん、起きたんですね。歯は磨きました? 歯磨き粉、絞っておきましたから、磨き終わったら早く食べに来てください。何がお好きか分からなかったので、長谷部先生に聞いて、食べられそうなものをいくつか買ってきました」

森本友紀はそう言いながら、手に持っていたものをテーブルの...

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