第26章 彼は私の夫

「あなたたちは……」警察官は私たちの関係に興味津々なようだ。

私は山本宏樹を指さし、唇の端に笑みを浮かべながらも、涙が思わず目尻から滑り落ちた。「この人は、私の夫です」

滑稽でしょう。

私の夫が、警察署で愛人を庇い、自分の妻をいじめているなんて。

これまで、公衆の面前で山本宏樹と事を荒立てたことは一度もなかった。

彼がどれほど酷いことをしても、私たちの関係を突き崩すようなことは決してしなかった。

山本宏樹は山本グループの権力者で、その一挙手一投足が世間の注目を集めている。

私は彼の評判を気遣い、見苦しい騒ぎを起こしたくなかった。だからこれまで、彼が他の女たちと一緒にいても、まし...

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