第302章 一口噛まれた

蹴り倒すどころか、かえって彼女を激昂させてしまった。

彼女はナイフを握りしめ、真っ直ぐに私へと突きかかってきた。

私は目を剥き、無意識に身を躱す。

だが背後は壁だ。二台の車の間に挟まれ、すでに退路は断たれていた。

その危機一髪の瞬間、石川萌香が矢のように飛び出し、丸山由紀の手首をがっちりと掴んだ。そのまま力任せに捻り上げると、カランッと甲高い音を立ててナイフが床に落ちる。

「まだ抵抗する気?」

石川萌香は冷ややかな視線を丸山由紀に向ける。

「大人しく警察が来るのを待つことね」

丸山由紀の瞳には、ドロドロとした怨念が渦巻いていた。

「あんたたち、覚えてなさいよ。絶対に許さない...

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