第309章 なぜこんなことを

山本宏樹は私を見つめ、薄い唇を真一文字に結んだ。その眼差しには複雑な色が入り混じっている。

「松田未菜が警察に連行された。お前が彼女の証拠を握っていると聞いたが」

それは疑問形ではなく、確信を持った断言だった。

最初から彼に隠し立てするつもりなどなかったし、山本宏樹の能力をもってすれば、それを突き止めることなど造作もないだろう。

「ええ、証拠なら持っているわ。もう警察に提出したけれど」

山本宏樹は眉をひそめた。

「どうしてそんなことをした? 未菜が妊娠していると知っているだろう……」

またその理屈か。

私は冷たく鼻で笑った。

「妊婦なら悪事を働いてもいいとでも言うの? 山本...

ログインして続きを読む