第106章

物音に気づいた全員が立ち上がり、彼女のほうへ視線を向けた。

家族の顔を見た途端、詩音は道中ずっと押し殺してきた感情をもう抑えきれなくなった。

目頭を熱くし、声を詰まらせながら叫ぶ。

「お父さん、お母さん――」

奈央が立ち上がり、目を赤くして詩音へ両手を広げた。

葵は気を利かせて応接室から退出した。

詩音はもう耐えきれず、奈央の胸に飛び込んだ。その肩口に顔を埋め、声を押し殺して泣きじゃくる。

奈央は片手で娘の腰を抱き寄せ、もう片方の手で背中を優しく叩いた。何も言わず、ただ涙ぐみながら、詩音の華奢な背中を一定のリズムで撫で続ける。

武治と悠は傍らに立ち、抱き合う母娘の姿を見つめて...

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