第11章

詩音はわずかに眉を跳ね上げた。

和也と琴音のよりが戻れば、正妻である自分など容赦なく追い出されるに違いない。

その時、和也が何を言うか手に取るようにわかる――たった五千万で目障りな妻を厄介払いできるなら、これほど割のいい取引はない、と。

彼にとって、五千万など端した金にすぎない。

だが、あの男はどんなに計算高くても、たった一つだけ見落としている。その企みは、とうにこちらへ筒抜けだということを。

本当に、どこまでも冷酷な男だ。

詩音は伏し目がちに睫毛を落とし、瞳の奥で渦巻く憎悪を隠した。

この数年、彼のため、この家のため、そして彼が立ち上げた会社のために身粉にして尽くしてきたとい...

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