第百十章

「ええ」

小崎芳康は背もたれに深く体を預け、少し顎をしゃくった。

「その時間になったら迎えに行くよ」

「了解」

詩音は二つ返事で承諾した。

記者会見での釈明が功を奏し、さらに次々と舞い込むオファーも相まって、詩音の名は再び表舞台へと押し上げられていた。

スタジオの運営も軌道に乗り、以前にも増して慌ただしい日々が続いている。

詩音は朝から晩まで、何人もの応募者の面接を立て続けにこなし、絶え間なく話し続けていた。終業時刻が近づき、ようやく一息ついた彼女は、車のキーを掴んで足早に外へ向かう。未処理の書類の束は、ひとまず葵に丸投げした。

そのまま帰宅はせず、車を走らせてサロンへと直行...

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