第12章

三十分後、車は藤原家の屋敷に滑り込んだ。詩音が車を降りるや否や、門前で待機していた年配の家政婦が歩み寄り、恭しく頭を下げた。

「若奥さま」

詩音はさりげなく尋ねた。

「和也と蓮はもう着いてる?」

「蓮さまは、賢治さまとお散歩に出かけられました」

家政婦は声を潜めて答える。

「和也さまと奥さまは、書斎でお話をされております」

「そう」

詩音は頷き、眉間を揉みほぐしながら小さく言った。

「食事の用意ができたら呼んで」

そう言い残し、彼女は階段を上っていった。

書斎の前を通りかかったとき、詩音は無意識に足音を忍ばせた。

そのまま通り過ぎようとしたものの、中から聞き慣れた女の...

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