第63章

恐ろしいほどの静寂が、病室全体を飲み込んだ。

詩音は微かに睫毛を震わせ、突きつけられた証拠に視線を据えた。脳裏をある考えが素早くよぎり、瞳の奥に冷たい嘲笑の色が浮かぶ。

なるほど、すべて辻褄が合う。

ただ胎児の発育に異常があるだけなら、琴音があそこまで頑なに隠し通す必要はない。ましてや、一人でこそこそと産婦人科に通うはずがない。

考えられる理由はただ一つ。この子が、彼女が海外にいた頃に身籠ったものだからだ。

再び和也へ視線を向けた時、彼女の目には無意識のうちに一抹の同情が混じっていた。

その視線は、和也の頬を強く張り飛ばすような屈辱を与えた。

こめかみに青筋を浮かべ、力任せに拳...

ログインして続きを読む