第70章

「う、ううん」

炎の視線は泳ぎ、小さな体を無意識によじって彼女の手から逃れようとしていた。

詩音は蓮の世話を五年間もしてきた。子供が嘘をつくときの、ほんの僅かな表情の変化や些細な仕草など、とうの昔に熟知している。

だから、炎が本当のことを言っていないのは一目でわかった。

彼女は眉をひそめ、彼の手首を掴む手に無意識に力を込めると、声のトーンを少し落とした。

「炎、いい子は嘘をついちゃ駄目よ」

手首に伝わる力に炎は痛みを覚え、ぱっと目元を赤くした。

その姿はひどく可哀想で、まるで部屋の隅に追いつめられた小動物のようだった。それでも意地を張り、下唇をぎゅっと噛みしめたまま、頑なに口を...

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