第71章

炎を九条グループのビル下まで送り届けると、詩音は車をUターンさせ、自分のスタジオへと戻った。

中へ入るなり、アシスタントの葵が焦った顔で駆け寄ってきた。

「雪見社長! やっと戻られましたね」

彼女は声を潜め、体を斜めにして応接室のほうを指差す。

「和也さんが来ています」

「和也が?」

その名を口にした途端、詩音の瞳に宿りかけていた温もりは一瞬にして氷点下まで冷え込んだ。幼稚園の門前で溜め込んだ怒りの矛先をどこへ向けようかと思っていた矢先、ご本人がわざわざ出向いてくるとは。

彼女は嘲るような冷笑を浮かべた。

「お相手してくるわ」

応接室の扉を押し開けると、ソファには相変わらず...

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