第80章

詩音は鼻で笑った。

「本当に私のことを思ってくれるなら、あの母子を今すぐ連れて帰ってよ! 琴音が辞退するのも、私が辞退するのも、結果は同じでしょ」

和也は眉をひそめ、声を荒らげた。

「お前が琴音に勝てるわけがないから、こうして助けてやってるんだろうが!」

詩音は呆れて笑うしかなかった。

和也の言い分はあまりにも堂々としていて、まるで自分が元妻を心から案じる善人であるかのようだった。

わざわざ出向いてこんな提案をしてやったのは自分からの施しであり、彼女のためなのだから、涙を流して感謝すべきだとでも言いたげだ。

「助ける、だと?」

ソファの方から、悟の声が響いた。

彼は雑誌を閉...

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