第96章

ロールス・ロイスが、あるレストランの前に静かに停まった。

詩音が車を降りようとしたその時、外からドアが開けられた。

顔を向けると、悟がすでにドアの脇に半ば寄りかかるようにして立っていた。片手をルーフにつき、わずかに身を屈めたその姿は、気怠げでありながらも気品に溢れている。彼がもう片方の手を差し出し、上を向けた掌が静かに詩音を待っていた。

詩音は口元に笑みを浮かべ、その手の上にそっと自分の手を重ねた。

悟の掌は乾いていて温かい。長い指が軽く曲がり、強すぎず弱すぎない絶妙な力加減で彼女の手を握りしめた。

ハイヒールを履いた足が地面に降り立つと、悟はタイミングよく手を少し引き上げ、彼女の...

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